三菱マテリアル株式会社は、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、電子輸送層を形成するためのインクのサンプル供試を開始しました。本インクは、低コスト材料を用いながら高い発電効率を実現するとともに、塗布による成膜プロセスに適した材料設計により、量産化に向けた安定した製造への展開が期待されます。
近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、軽量・柔軟で設置場所の自由度が高いペロブスカイト太陽電池の開発が加速しています。ペロブスカイト太陽電池は複数の機能層から構成されており、その性能は各層の材料特性に大きく依存します。中でも「電子輸送層(*1)」は、発電した電気を効率よく取り出す役割を担う重要な層です。
(*1)ペロブスカイト発電層で生成した正孔と電子のうち、電子のみを集電板に運搬する材料
電子輸送層には、発電効率の向上と安定した製造の両立という観点でいくつかの課題があります。具体的には、ペロブスカイト層との界面で生じる電気的損失の抑制や、デバイス性能のばらつきを低減する均一な膜形成が求められます。また、フィルム基板やペロブスカイト層は熱やプロセス条件の影響を受けやすいため、ダメージを与えない低温プロセスへの対応も重要な課題となります。
当社イノベーションセンター(茨城県那珂市)では、これらの課題を解決するため、酸化スズ(SnO2)ナノ粒子を用いたインクの開発に取り組んできました。ペロブスカイト太陽電池には、「順型構造」と「逆型構造」と呼ばれる2つの構造があり、それぞれで電子輸送層に求められる材料や形成方法が異なります。2022年度から2025年度にかけては、NEDO(*2)のグリーンイノベーション基金事業のもと、エネコートテクノロジーズとの共同開発を通じて、順型構造向けおよび逆型構造向けの電子輸送層インクの開発を並行して進めてきました。
(*2)新エネルギー・産業技術総合開発機構

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- 図1 ペロブスカイト太陽電池の模式図